NSP会員さん、こんにちは(6)菊池亮さん|奥州百姓として 愉しい背中を次の世代に|岩手県奥州市

私たちNSPは、全国に同じ想いを持ってくださる300名弱の会員さんと共に、ヨコのつながりを大切に活動を続けています。

今年も事務局や理事長・理事・監事が、会員さんのところへ伺い、お話を伺います。
「こんな風に暮らしています!」と、地域と向き合うお姿、暮らしぶり、生き方をご紹介します。
それぞれの会員さんの想いや、その土地の生活感や季節感を皆さまへシェアしてまいります。

NSP会員さん、こんにちは(6)
今回は、岩手県奥州市江刺区にて、菊池亮さん(奥州百姓|農家 菊江門)に事務局の樋口がお話を伺いました。

4つの柱で付加価値を創り続ける現代のお百姓さん
「農家でなくて、百姓です」と語る菊池さんは、江刺生まれ江刺育ち。
30歳を過ぎてから再びふるさとの江刺で、自然と調和のとれた暮らしをされています。

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岩手県南部の奥州市江刺区(旧岩手県江刺市|平成の大合併により4つの他市町村と合併)で、農業に従事する人というよりも、江刺の土地で必要とされるご自身の役割を自覚しながら、そこにいるからこその地域と自然に寄り添った仕事に打ち込まれていらっしゃいます。

  • 持続可能な農業|お米、露地野菜(主にきゅうり)を中心とした農産物生産、農作業受託(JA岩手県青年組織協議会理事・JA江刺青年部)

  • 除雪受託|「冬は田んぼも畑もできないにもかかわらず、化石燃料を使って温めてまで何かを作ることはやりたくない、だったら素直に雪がある、除雪しよう」が菊池さん流。

  • 家具制作|人生の師でもある家具職人の親方の元で技術と感性を修行し、家具制作から部屋の内装までを手掛けられている日々。

  • 予備自衛官|東日本大震災後のラジオ広報がきっかけで、予備自衛官補として3年間50日以以上の訓練を経て、予備自衛官としても活動中。

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「季節によって、色々な仕事をしてきた昔のお百姓さんのように、自然のサイクルの中でそれが一番妥当だとされる仕事をね」と、自然のリズムに循環する農業と暮らしを実現されている菊池さんだからこそ、「田舎暮らしはスローライフでないし、自然はスローではない」と語る言葉には説得力があります。

愉しい背中を次の世代に見せられたら、人の流れも変わる
「おまえの生まれた土地は良いよ、こういう歴史があるよ」と人生の師でもある家具職人の親方から教わったことがきっかけで、江刺の風土、地の利、農業・農家を見つめ直した菊池さん。

「これからの時代に合っているな」と未来を見据えた前向きな気持ちで江刺に戻り農家を継いで、約10年。

東北一の大河、北上川(全長246km)をはじめ、自然資源の持つ本当の豊かさとの共存共生が実現できる江刺の土地。今まで暮らしてきた人たちが、代々にわたり築き守り続けてきたふるさとの風景、農業景観も含めて、水のこと、土のこと、山のことに目を向けながら、菊池さんらしく 続けること、始めること、そして愉しみながら生きていらっしゃる姿が光ります。

「やっぱり江刺っていいね」の想いは、仲間にも次世代に生きる人たちにも必ず伝わるはずです。

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高汗度人間、晴耕雨読のある暮らし
菊池さんの暮らしの中には、江刺の土地に暮らす人たちが何世代にもわたって育み守ってきた豊かな自然の景観とともに、歴史があります。

「太古からその地域で人々が共有してきたことや民間伝承的なものが、時代背景とともに内に秘められたまま閉ざされてしまうと郷土の歴史を振り返ることも難しい。歴史を振り返ることを、口伝えで残したり、語り継いでいかないと」と危機感を持ちながら、「まずは自分が知らないとね」と語り、江刺に眠る歴史資源にも光を当てている菊池さん。

情報を得るというよりも、地元の過去・現在・未来をひとつに考えながら人生をきざまれているような菊池さん。ご自身が生まれ育った江刺の歴史や文化について、あるがままを受けとめられ・想像され、東北の大地で輝いていらっしゃいます。

菊池さんの一番の関心分野は、古代東北の英雄・民のためにすべてを捧げた若きリーダー阿弖流爲(あてるい)・自然との共生から生まれた蝦夷社会について・そして江刺とつながりのある作家の高橋克彦さんについてです。

点在している史跡や神社、伝承伝説、歴史書物を紐解きながら、自分なりの阿弖流爲像やヨコ型の蝦夷社会の世界観を重ね合わせていらっしゃいます。

仙人みたいな暮らしではなく、美味しいものを食べたり、温泉に行ったりもしながら、日々、身体も頭も動かしながら、たくさんの汗をかきながらの晴耕雨読の暮らしを、日常の瞬間瞬間を大切にされている菊池さん。

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思考を“遊ばせる”時間、百姓としての5つ目の柱を計画中!
「お金じゃない本当の価値、豊かさ、暮らし方に憧れてくる人の流れをつくりたい」、「田舎でこんな暮らしができるんだ、いいね。自分も移住しようかなと思ってもらえるように」と語る菊池さん。

過度に観光地化されていない、ありのままの自然の美しさと暮らしが残っている江刺の魅力を内外の人と語り合え共有できる場、江刺の素顔を肌で感じてもらう体感できるグランピングの場、「地」の人と交流する民泊の場の実現に向けても動き始めた菊池さん。

「農業を通して、直接的にも間接的にもやるとすると、そこには知恵が必要なんだけどね」と悩みながらも、わくわく感と真剣な気持ちの入った想いと覚悟がこちらにも伝わってきます。

「地元の人たちが意識を変えるきっかけとなる場ともなれば、地域の人たちの輝きも途絶えない」と語る菊池さん。

江刺とこれからご縁がある人たちと地域の日常をつなぐきっかけとして、江刺の一文化拠点として、菊池さんの想いの実現から広がる共感と分かち合いによる江刺の本来の姿が描かれているように感じました。

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すてきなご夫妻との出会いに話が尽きない!
暮らし方、生き方に、すてきな年の重ね方に、物語の花が咲きました。
江刺での菊池さんの取材を終えたあと、ご縁をいただいて岩手県・最南部に位置する一関市・厳美町のゲストハウス山笑亭さんを訪ねました。

これまで積み上げてこられた見識と体験と直感を並べてお話ししてくださり、心をほっと暖かくしてくださり、そっと背中を押してくださる山笑亭さんのオーナー及川さんご夫妻。

胆識のあるご夫妻と接する中で、「ここまでやれるんだ」「こういうこともできるんだ」と学び、勇気をいただき、世代交流のすばらしさも実感しました。

収録予定など一切なかったのですが、及川さんご夫妻と菊池さん、そして樋口の4人のありのままの会話音声を菊池さんの日常の暮らしの中にある風景、お百姓さんの姿、樋口の体験をもとに動画としてお届けします。
(20年ぶりに田んぼのあぜ道を歩いたため、樋口の足がおぼつかず、撮影時カメラの手ブレにより映像に一部乱れがありますことをご笑覧ください。)

その土地の、その人の魅力をありのまま愉しんでいただけるものと願っています。

及川武芳さんご夫妻|ゲストハウス山笑亭オーナー
芸術村|アートセンター キューブ代表
陶芸香月窯協力助人、ラ・フランス果樹園オーナー、蕎麦畑オーナー
専門|アート・建築・土木・木工

◎後記 いい土といい水といい人が紡ぐ静謐な空間と自然な生き方と丁寧な暮らし方
その土地に寄り添う菊池さんと及川さんご夫妻の謙虚な姿勢、丁寧な日々の暮らしの大切さ、心豊かな日々に、大変心打たれました。

「足るを知るは富」、内側にあるすばらしさに気づくこと、その豊かさを積極的に愉しむこと、大自然の中にある本物を喜ぶ時間が持てること、求めず共に生きること。

露地栽培だからこそ旬の野菜をいただけるありがたさ。
「今、生きている。生かされている。」「根をはる」感覚。
気持ちの上下なく肩の力がふっと抜ける感覚。

マルコポーロ・東方見聞録のジパングは東北だった?
奈良の大仏の2/3は東北の黄金だった?
風流のみちのく、歌枕の多いみちのく?
名馬の産地、稲作と豊かな大地への憧れは古くからあった?
私利私欲のない、民の心を支える理想のリーダー阿弖流爲(あてるい)? 

そうなの?そうなの?と驚きの連続。
日本列島の中には、1つの日本ではなく、いくつもの日本があることを改めて感じました。
ふるさとの歴史は、その土地に暮らしてきた人たちが過去を懐かしむためだけではなく、新たにその土地に魅了された人たちにとっては、第二、第三のふるさとへの喜びにもなります。

菊池さん、及川さんご夫妻、すばらしい機会をいただきありがとうございました!

◎参考
岩手県プロフィール
奥州市観光情報サイト おうしゅう放浪漫
樺山遺跡
奥州市埋蔵文化財調査センター
JA江刺
予備自衛官制度
芸術村|アートセンターキューブ


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